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2011-10-28

【ハワイ】 放射性ストロンチウム、ハワイ 島ヒロ(東海岸)で検出

ハワイ島ヒロで、日本の福島第一原子力発電所の事故以来、アメリカ国内では初めて牛乳の中から放射性ストロンチウムが検出されたことを、昨日環境保護庁(EPA)が明らかにしました。
「我々は初めてとなる、牛乳の中のストロンチウムの存在を確認するための分析を完了し、ハワイ島東海岸の町ヒロのサンプルの中から微量のストロンチウム- 89を検出した。」
環境保護庁(EPA)は私にも送られてきた、昨日の公式発表の電子メールの中でこう述べています。
「検出された値は通常の値の27,000倍でしたが、米国食品医薬品局(FDA)によって設定された『原因究明着手』レベルは下回りました。
確かに、米国食品医薬品局(FDA)は 『原因究明着手』は行いません。
(FDAの食品中に含まれるストロンチウム90に関する、原因究明着手の標準値は、4400 PCI / Lです)
環境保護庁は検査結果をPDF形式で公開しました。

核分裂によって生み出される危険な物質の中でも、人間によって作り出される2種類の放射性ストロンチウム、Sr.89とSr.90は、人間と動物の健康にとって最も危険な物質です。
この二つは物質特性がカルシウムに似ているため、人間の骨や脊髄に吸収蓄積されやすく、ガンを引き起こすことが確認されています。
この二つは特に胎児・子供の成長途上の骨に対し、極めて危険です。
EPAは4月4日にヒロに収集されたミルクのサンプル中リットルあたり1.4ピコキュリーのストロンチウム- 89を検出しました。
EPAが定める飲料水中のSr – 89のためのEPAの最大汚染レベルは、1リットル当たり20ピコ・キュリーです。

ストロンチウム89の半減期は50.5日ですが、Sr – 89という名称は時にメタストロンのがん疼痛治療薬の商品名としても使われています。
なぜなら、この薬はストロンチ ウム89が健康な骨を破壊する機序と同じ原理で、急速に成長する骨肉種に集まり、ガン細胞を破壊するからです。
しかしEPAはストロンチウム90の方が半減期が29年と健康への悪影響が長いため「環境の中で最も重要な意味を持つ放射性物質である」としています。
声明によるとEPAは今回の試験ではストロンチウム90を検出しておらず、飲料水中からはいずれのストロンチウムも確認していません。

「ストロンチウムはいったいどこにあるのか?」
これが福島第一原子力発電所の事故以来組織されたフォーラム自由の天使のメンバーも参加している、核監視グループが持つ疑問です。
そしてどこにあるかという問題だけでなく、なぜこれほど有害な放射性物質が、EPAの公表項目の中に含まれないのか?という疑問も残ります。

私が確認した限りEPAはストロンチウムを公表項目には含めていませんが、それはテスト項目にストロンチウムが含まれていないからにほかなりません。
福島第一原子力発電所の事故以来、テスト回数が増えているにもかかわらず、です。

ストロンチウムのテストは放射性セシウムの存在がきっかけでした。
それはヒロ、ヴアーモント州モンペリエ、オークランドの牛乳からも検出され、アイダホ州ボイシカリフォルニア州リッチモンド、ソルトレイクシティ、その他の都市の沈殿物からも検出されています。
EPAの公式発表では、ヒロの牛乳からはまずセシウム134とセシウム137が発見され、4月4日になってストロンチウム89が検出されたとのことですが、発表が28日にずれ込んだ点について、分析に手間取ったためだと説明しています。

「日本の福島第一原子力発電所の放射性物質の拡散に関し、放射性セシウムが検出された場合には…..そのサンプルについて、ストロンチウムの分析が行われます。ストロンチウムの分析には時間がかかる複雑な過程を必要とします。」

セシウムは4月13日の試験でも、ヒロの牛乳から検出されたことが公表されています。

一部のブロガーや活動家は、アメリカはテストでプルトニウムやストロンチウムを検出しているにもかかわらず、そのことを隠している、と非難しています。
こうした批判は、EPAの 環境問題に関する、より高度なデータベース内を検索した結果得られたもののようですが、このデータベースは福島第一原子力発電所の事故に対応し、最近になって公開されました。
以前は科学者だけが利用できるようになっていたものです。
リストで公表されているプルトニウム、ストロンチウムの量はともにごく微小です – たとえば1立方メートルあたり0.0008ピコキュリー、あるいは-0.00013ピコキュリーと、検出エラーを起こすほどに小さな値であり、EPAの公式声明によれば通常『検出不能』とされる値です。

ただし大切なことは、環境実態に関してはたとえマイナスの数値でも、非検出とみなされる数値であっても、すべてのデータの数値を明確にすることです。
なぜならこうした数値は分析にあたる専門家にとって、状況を完全に把握するためには必要だからです。
「非検出」という判断は、環境実態基準に基づく客観的評価により、基準より低いという測定結果が2度以上確認された場合に下されるべきです。

従って、ストロンチウムとプルトニウムの測定値が微小、またはマイナスの値を確認した場合において、「非検出」と公表される可能性があります。
EPAが週末の昨日公表した観測結果では、ヒロ以外の場所では、ストロンチウムとプルトニウムは非検出となっています。
ハワイの環境衛生当局は、これまで牛乳で検出された放射性物質については、 危険性が無い値であることを保証しています。

保健省の環境衛生サービス部門の責任者リン中曽根は、ストロンチウムが危険ではないと述べました。
「結論から言って、健康に影響は無い。」と中曽根は語ります。
「私はそれをデータの読み違いだと理解しており、最新のデータによって健康 に対する危険性は無いと判断できる、というのが私たちの見解です。」
日本から飛来し、ハワイ諸島最大のハワイ島のミルクから検出されたストロンチウム89について、ハワイ・ニュースの中でこのように述べました。

しかし、、ウィスコンシン大学教授ジェフリー・パターソンをはじめとする幾人かの科学者は、放射性核物質の被ばくについて、『安全と言えるレベル』など存在しないと主張しています。
「放射性核物質の被ばくに関しては、原因が食べ物であろうと、水あるいは の他であろうと、安全なレベルなどはありません。ヨウ素131、セシウム137などの放射性核物質の被ばくは、がんの発生率を増加させます。」
「このような理由から、食物と水に含まれる放射性核物質については、その値 を最小にするため最大限の努力を払わなければなりません。」
このように『社会に対する責任を果たす科学者』のサイトに掲載されています。

[ Sr-89のための原因究明着手基準に関する米国食品医薬品局(FDA)の公式見解 ]

「FDAには、ストロンチウム89のための公表された原因究明着手基準はありません。
その理由は、1998年のFDAのガイダンス(2003年のFDAポリシー手順書はそれに基づく)が、もし大量の放射性核物質が放出されることがあれば、それは原子力発電所の事故など、FDAの管轄外の事故によるとの予測に基づき成立しているからです。
ただしそのことは、ストロンチウム89や他の放射性核物質の存在が『放置される』ということではありません。
万一FDAが食品の中に、健康にとって有害となる量の放射性核物質を発見した場合には、FDAは、消費者の健康および安全性を保護するために適切な処置を講ずることになります。」

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この原稿は、この『星の金貨』をお読みいただいている方からご依頼を受け、翻訳したものです。
科学記事は読んでいて、難しいところもあると思いますが、最後までお読みになられることをお勧めします。

注目していただきたいのは、アメリカの環境保護庁が「放射性セシウムが検出された場合には…そのサンプルについて、ストロンチウムの分析が行われます。」という見解を述べている部分です。

福島第一原子力発電所の事故に関し、日本の放射性物質の検査については、放射性ヨウ素とセシウムのことばかりが取り上げられます。

しかし、過去に【アメリカの原子力施設を襲う大火災〈 老朽化した原子炉からはトリチウム(放射性三重水素)漏出の恐れ 〉】 http://kobajun.chips.jp/?p=672 でご紹介したのですが、トリチウム(放射性三重水素)が米国原子力サイトの四分の三から漏れていた、という事実がありました。
トリチウムが漏出していたのは、すべて福島第一原子力発電所より新しい施設で、当然ながら福島第一原子力発電所からも、事故と関係なくトリチウム(放射性三重水素)が漏れていた可能性があります。
これが事故となれば、相当な量の漏出があった可能性があります。

さらに事故を起こした福島第一原発の原子炉のうち、爆発事故を起こした3号機は『プルサーマル機』、事故により『アクチニドの核種(プルトニウム、アメリシウム、キュリウム)などの低揮発性の放射性核種も放出される可能性がある』とのことです(日本の原子力発電所で重大事故が起きる可能性にMOX燃料の使用が与える影響 / 核管理研究所(NCI)科学部長 : エドウィン・S・ライマン博士 (PhD) – http://kakujoho.net/mox/mox99Lyman.html )。

【厚生労働省】 食品からの被曝「生涯100ミリシーベルト」安全委答申

asahi.com(朝日新聞社)

食品からの被曝(ひばく)による影響を検討していた食品安全委員会は27日、「健康影響が見いだされるのは、生涯の累積でおおよそ100ミリシーベルト以上」とする評価をまとめ、小宮山洋子厚生労働相に答申した。厚生労働省は、緊急対応として使われてきた現在の暫定基準を見直し、新基準案を年明けまでにまとめる見通しだ。
 

 「生涯累積100ミリシーベルト」(原発事故由来ではない自然放射線などを除く)は、新たな正式基準をつくる根拠になる。これまで同委員会は、食品だけでなく環境からの外部被曝も含めて100ミリシーベルトだと解説してきた。

 しかし同日の記者会見でこれまでの説明を訂正。外部被曝は所管外だとして、「外部被曝がほとんどなく、汚染された食品からだけ被曝する状態」を前提にして考えた値だと解説。「内部と外部の合計ではない」と述べ、食品による内部被曝だけで100ミリシーベルトという意味だと強調した。しかし福島県など外部の放射線量が高い地域は現実にはある。外部被曝分をどう考えるのかという問題は、厚労省などに判断を委ねる意向を示した。

 厚労省は、東京電力福島第一原発事故による放射性物質を含んだ食品を1年間摂取した場合の被曝線量を、全年齢平均で約0.1ミリシーベルトと推計している。このままの状態で0歳児が100歳まで生きたとしても、生涯10ミリシーベルト程度という計算になる。

 従来の暫定基準は、食品からの被曝を放射性物質全体で年間17ミリシーベルトを超えないようにするという大枠から、1キロあたりの基準を算定した。放射性セシウムなら野菜や肉類で1キロあたり500ベクレル。この物差しで農水産物の出荷停止措置がとられた。国際放射線防護委員会(ICRP)の換算式によると、成人が1キロあたり500ベクレルのセシウム137を含む食品を200グラム、365日食べ続けると、内部被曝は約0.5ミリシーベルトに相当する。

 小宮山厚労相は新基準について「安全性を確保する必要があり、(暫定基準よりも)厳しくなる」との見通しを示す。ただ検討作業は簡単ではない。生涯累積なので年齢によっても差が出る。子どもは大人より放射線の影響を受けやすい可能性がある、と答申は指摘した。厚労省は31日、薬事・食品衛生審議会を開き、食品安全委の答申を報告する。(小林未来)